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高校時代から創作活動に励んでいたという多和田葉子さん。3年生の夏に自費出版した小説を近隣の書店に置いてもらったこともあるという=2022年11月8日、東京都文京区

 創立120年を超え、多摩地域の普通科高校としては最も長い歴史と伝統のある東京都立立川高校。卒業生で、小説をはじめ、詩、朗読、語学研究と幅広い分野で活躍するドイツ在住の作家、多和田葉子さん(64)に、進学の経緯や高校生時代の思い出を寄稿してもらいました。

【連載】高校思い出クリック~青春群像記~

高校をシリーズで紹介する企画。今回は東京都立立川高校の1回目です。

 立川高校に通うことに決まった時は本当に気持ちが高揚しました。説明会のようなのがあって、家に帰ってからいつまでもダイニングキッチンのテーブルにすわって、学校紹介のパンフレットのようなものをめくりながら、台所仕事をしている母に向かってずっと、しゃべり続けていた自分を覚えています。

 1981年までは学校群制度というのがあって、わたしの場合は「72群」を選んで受験したのですが、受かったらその時点でくじ引きで立川高校に行くか、国立高校に行くかが決まる、というしくみになっていました。できれば立川高校へ行きたいと思っていました。

 というのは、わたしは国立市の団地に住んでいて、小学校は国立第五小学校、中学校は国立第一中学校に通ったので、そのすぐ近くにある見慣れた国立高校は素敵だとは思ったけれど、そこへ通うのではそれまでの生活の続きのようであまりにも変化がありません。

異世界への「越境」

 せっかく高校生になるのだか…

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